2025.04.13 杭全神社 御田植神事

 650年続くと云われる杭全神社の御田植神事が拝殿にて執り行われました。

 この神事で何度も繰り返される台詞があります。
シテ(主役)  「世の中の良ければ、ほながの尉(じょう)も たーれたれ」
地方(じかた)  「大柑子(だいこうじ)を二つ並べて、福の種を蒔こうよ」
世の中に疫病や飢饉がなく、無事に繁栄することを願うというシテの言葉に対し、めでたいとされる大柑子(大きなみかん)を二つの太陽に例え、その下で稲を育てれば、豊作に違いないという地方の返しが心地良く、耳に残ります。
「たーれたれ」は、豊作で疫病や飢饉がなければ、世の中、事足りるという意味です。 

 <一部、抜粋>

 シテは鍬(くわ)で田を耕す所作をしたたあと、唐鋤(すき)をつけた牛を連れて、登場します。
 田を鋤く前に農耕の大切なパートナー、牛さんと会話をします。
シテ「西宮の尉(ぜぜ)が」
牛=「月に三度の雨、月々(2ヶ月)に六度の雨、モオーウ」
「西宮の尉」とは、雨乞いの祈祷をする人ではないかということです。
 ここで、シテが名台詞を発します。
「牛のやまう(病)、人のえきれい、萬(よろず)悪しきこと、熊野の奥の泥の海へさしのけい」
庶民の幸せを願う気持ちが強く顕れていて、何だか、ほっこりとした気持ちになります。
 シテは「させい、ひょうせい、ひょうせい」と繰り返しながら、牛を引き、唐鋤で田を鋤きながら拝殿をゆっくりと廻ります。今回は子どもたちに参加していただいて、とても、かわいい神事となりました。